筆者: 小西恒夫
【はじめに】
教育楽器(教材楽器)の国内販売状況について、
他楽器との比較や小学校生徒数推移から考察する。
今回は「公開されている数字をグラフ化する」という
極めて客観的な手法で進める。
【注釈】
- ここでは教育楽器を「小学校教育に用いられるリコーダー
および鍵盤ハーモニカ」と限局する。
【参考文献】
- 「全国楽器製造協会楽器生産統計調査票」
- 「楽器産業ガイド-全国楽器協会業界統計調査〈製造企業〉」
(ミュージックトレード社)
【各種楽器の国内販売状況】
「全国楽器製造協会楽器生産統計調査票」および「全国楽器協会業界統計調査」
(以下「全楽協・全製協統計」とする)から抽出したデータを表にした。
【注釈】
- 上表は楽器別・西暦年別の国内での販売状況を示す
- 「全楽協・全製協統計」に回答協力した国内製造業者のみの数値
- 「販売」とは製造業者(メーカー)の販売した動態を示す
- 「数量」とは楽器単体の販売個数である(例:1本、1台)
- 「金額」とはその楽器(製造業界)の年間売上計と解釈される
- 「単価」については筆者が計算した。概ね「卸値」に近似する筈である
- つまりこの数字は「小売状況・消費者価格」を示す訳では無い
- その他詳細については出典を確認されたし
【上記楽器(8種)を選択した理由】
「全楽協・全製協統計」にある種々の楽器から以下の観点で選択した。
- 教育楽器
- 個人による購入(使用)が想定されるもの
- なるべく高数値で動態の顕著なサンプル
- 管楽器(吹奏楽器)では数的傾向の見やすいフルートを選択
【注目点】
- 2011年版「全製協統計」の品目分類においてリコーダーおよび
鍵盤ハーモニカは「教材楽器(School market instruments)」
と分類されている。 - 2018年版「全楽協統計」では当該楽器は
「その他の楽器(Other market instruments)」とされている。
上表「販売数量」を縦軸としたグラフ
グラフ下方が見にくいので拡大する
【注目点】
- リコーダー・鍵盤ハーモニカの販売数量が顕著に高数値である。
【楽器別年間売上・単価比較】
上表8種楽器について15年間(2001〜2015)の数値を平均化した。
【注目点】
- 概ねリコーダーで8億円、鍵盤ハーモニカで20.8億円の年間売上となる。
あくまで参考として、アップライトピアノ・グランドピアノ・管楽器計の
国内販売状況を表とした。
上表の15年間平均値は以下のとおり。
【教育楽器の販売状況と生徒数の相関について】
一般的に小学1年生で鍵盤ハーモニカ、小学3年生でリコーダーを履修する。
その事実と販売状況の相関について調べるため、先の表に各々の生徒人数を照合してみた。
【注釈】
- 「比率」は筆者の計算による。
但し「販売数量」の全てが「1年生が鍵盤ハーモニカを買った数」
(リコーダー〃)ではないため、厳密にはこの比率に意味は無い。
生徒数および販売数量を縦軸としたグラフ
【注目点】
- 「生徒数>販売数」である。
- 生徒数・販売数量の数値勾配は
緩く近似していると言えなくはない。
【結 論】
上記【注目点】を根拠にリコーダー・鍵盤ハーモニカ販売領域の
少なくともある程度は小学校が市場となっていると推察される。
【おわりに】
各種楽器の比較により様々なものが見えてくる。
本文中出来るだけ客観的に考察を進めたつもりだが、その分行間にも
又様々なものが含有している。
残念ながら筆者では調べられなかった点も多々ある。
願わくば各方面からの声を拝聴し、教育現場の質向上や
音楽の愉しみ方・あり方の改善に立ち向かっていきたい。